第一の法則 嘘八百は並べない  


「世の中は肩書きに弱い」


という欠点を持っている。

 日本は高度成長の波があって学歴社会がはびこってきたからなおさらといえばなおさらだ。

 競争原理が教育の基本に盛り込まれてきたから致し方ないといえば致し方ない。

 けどそんな美味しい弱点を詐欺師が見逃すはずがない。

 当然肩書きを手に入れる。

 あるいは肩書きを詐称することで、その効力を利用しようとする。


 もっとも詐称しやすくて世間が羨望するのが学歴。

 中退したのに卒業なんてザラだし、ろくに在籍もしないで卒業なんてのもある。

 そういえば、悪党は、「貧乏から這い上がった」

「学歴も無いのにのし上がった」

系の立身出世物語にロマンを求めがちだけど、詐欺師はその手の傾向は薄い。

「始めから一流」の方面が好きだ。

 家柄詐称なんてのは夫を殿下と呼んで宮様気取りだったなんていうのもあるくらいだ。


 名誉。

 ステータス。

 役職の詐称なんてのは、黒詐欺なんかには有効だな。

 黒詐欺というのは、詐欺師を詐欺する詐欺のこと、業界用語だ。

 学歴の詐称あたりで大概の良い人はたぶらかされるな。

 だいたい良い人は正直者だ。

 自分が嘘をつかない分、詐欺師の嘘も分からないことが多いんだ。


 学歴。

 家柄。

 名誉。

 ステータス。

 教養。

 出身地。

 有名人とお友達等々。

 詐欺師は実に様々なものを詐称するけど、そこにはとっても面白い特徴があるぞ。

 そう、詐欺師第一の法則 <嘘八百は並べない>

 例えば学歴。

 見たことも聞いたこともない一流大学を詐称したりはしない。

 在籍したことがある学校とか、兄弟の出身校だとか、いとこが留学していたとか。

 とある事実を使って、そのとある事実の一部だけを自己都合で変化させて詐称する。

 全くの嘘八百を並べると話に花が咲かなくなるだろ

 詐欺師たるもの話に花を咲かせたい。

 咲かない花には実がならない。

 詐欺師最大の武器は口先なんだぞ。

 相手にあわせて七色変化。

 できるだけ話に花を咲かせて、獲物を翻弄する必要があるんだ。

 花に実がなれば収穫だあぁー。

 詐欺師なんだぞ。

 甘い汁が吸いたい。

 口先三寸、話に花が咲かなきぁ始まらない。

 無骨で無口な詐欺師なんかいるかぁ?

 そんな奴いねぇーに決まってんだろ。

 詐欺師第一の法則 <詐欺師は嘘八百は並べない>


 詐称だけに限らず、詐欺師は全ての話に関して、とある事実を使って、

そのとある事実の一部だけを自己都合で変化させて使う。
 そのとある事実もできるだけ自分の事実を用いる。

 万が一、本当にとある事実関係者に出会ったりする可能性も無きにしもあらず。

『バレたらどおしろってんだよぉ、べらぼうめぇ…』

と変な江戸っ子の詐欺師なんだな。

 ビクビクしながら生きてる詐欺師としては、他人の話の借用では心もとない。

 危険が大きすぎる。 

 危ない橋は渡ってらんねぇー。

 嘘八百は詐欺師にとっては化けの皮が剥がれる致命傷になりかねない。

 だから嘘八百は並べないものなんだ。


 それでも貴方は詐欺師の嘘を見破ることができ.るかなぁ〜?